読む人,そして読むタイミングを選ぶ本。
「アフリカ世界を読む」というタイトルであるが,その実はアフリカにおける資源,そしてそれを巡る世界の資源競争がメインの内容であった。とは言え,アフリカにおける日本の政府の訪問先や,アメリカ外交の背景を考える上で,資源というのは重要な素材であり,必ずしもタイトルと内容がかけ離れているわけではない。
本書を読んだ印象としては,中学校の社会の授業などで使った資料集のイメージであった。実際,石油,LNG(液化天然ガス),ダイヤモンド等の説明する章は,日経新聞・エコノミスト・フィナンシャルタイムズといった新聞記事の寄せ集めという印象がぬぐえない。そういう点では読み物としておもしろみに欠ける点はある。しかしながら,現在,そしてこれからアフリカ大陸で起こる国際政治的事象の背景を考える上で,「なぜ政府はこういう行動をとったのだろう」と考える際に読むと,ヒントを与えてくれるのではないだろうか。
またアフリカ資源に関する記事や事例を関連づけてまとめてくれているため,実際にアフリカで資源セクターに関わる人にとっては,頭を整理するのにもよいと思う。
上記のような参考資料の役割を持つとともに,本書の意義は,日本にとってアフリカとは,貧しく支援すべき地域という評価だけでなく,ビジネスなり資源獲得地とみなすべきと間接的に示したことにあるとも考える。